愛希れいか 「全身全霊、今の全てをかけて挑みたい」4年ぶり主演ミュージカル「マタ・ハリ」 「べらぼう」朝顔役で成長証明

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 元宝塚歌劇団月組トップ娘役で俳優の愛希れいか(34)が今秋、柚月礼音とのWキャストで主演ミュージカル「マタ・ハリ」に臨む。2021年の前回はコロナ禍で公演が一部中止になるなど不本意なところもあっただけに、今作にかける思いはひとしおだ。20世紀初頭の伝説的スパイであるマタ・ハリや、絶賛されたNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」での江戸時代の女郎・朝顔を演じるにあたり、愛希が彼女たちの中に見いだしたのは何だったのか。

 愛希が初めて「マタ・ハリ」を演じた年は、稽古が中断したり、大阪での3公演が中止されたりとコロナ禍にほんろうされた。当時は「毎日、止まるんじゃないかという不安の中でやっていた」と振り返る。「ちょっと不完全燃焼だった」だけに、再演のオファーを「また挑戦できる、うれしい」と快諾した。

 マタ・ハリは20世紀初頭に欧州で人気を博したダンサーで、仏独の二重スパイ。第1次大戦中にフランスで処刑された。その劇的な生涯はグレタ・ガルボが映画「マタ・ハリ」で演じ、マレーネ・ディートリヒも映画「間諜X27」でマタ・ハリがモデルの主人公を演じるなど、度々映画や書籍になってきた。

 現代の日本人とはかけ離れた人生を送ったマタ・ハリには「理解しがたい部分もすごくあって。演じるにあたって役を理解しないといけない。そこでは苦労した」と言う一方で、「本当に心が休まらないだろう、どれだけ心労があっただろうと思いますし、どれだけの危険の中で生きて来たかと思うとすごく胸が苦しくなりますし、すごい人だなと思っています」と敬意も払っている。

 「女性としてそう生きて行くしかなかったみたいなものはすごく理解できるし、共感できる部分もあった」という手がかりから役作りしていったが、「すごく難しかった。実感としてマタの苦しさだったり、なかなか出てこなくてすごく苦労しましたね」と苦闘。「ベストは尽くしましたし、ぎりぎりまでチャレンジしたけど、納得がいくものではなくて、もっとああしたいこうしたいというのが出てきてしまった」と率直に認めた。

 あれから4年。愛希が俳優として成長したことを図らずも証明したのが、今年1月に出演した「べらぼう」だった。第1話で死ぬものの、主人公の蔦重やヒロインの花の井に大きな影響をおよぼす薄幸な女郎・朝顔役の演技が絶賛された。

 「とてもやりがいのあるお役で、短いシーンでしたけど自分も思い入れがかなりあるので、皆さんにそうやって言っていただけてすごくうれしい」という、俳優としての手応えを得た役だった。

 朝顔もまた現代の日本人からは遠い存在のように思えるが、愛希は「生きるために自分を売って選んでもらう吉原で、あれだけ優しく、人にいろんなものを譲り、自分を犠牲にしていく人は、人生何周目なんだろうと思うような人物だったので、すごく尊敬しましたし、どんなに苦しい状況でも明るさを忘れずに生きていけるのを、人として、女性として尊敬するところだなと思って演じていました」と、共感力を発揮できていた。

 今後は「とにかくバラエティーに富んでいたい、お客さまを、ファンの皆さまを退屈させたくないというのが自分の中にあるので、わりと決めずに、とにかく今を生きたい」という。まずは「大好き」という「マタ・ハリ」に「全身全霊、今の全てをかけて挑みたい」という決意で取り組む。

 ◆愛希れいか(まなき・れいか)1991年8月21日生まれ、福井県出身。2009年、宝塚歌劇団入団。宙組公演「薔薇に降る雨/Amour それは…」で初舞台。月組配属。12年、月組トップ娘役。主な出演作は「ME AND MY GIRL」「1789-バスティーユの恋人たち-」など。18年の「エリザベート-愛と死の輪舞-」で退団。トップ娘役在任期間は歴代3位。今年はミュージカル「イリュージョニスト」、ドラマ「相棒 season23」最終回などに出演。