神戸市中央区のマンションで会社員片山恵さん(24)が20日夜に刺されて死亡した事件で、東京・新宿区の会社員谷本将志容疑者(35)が殺人容疑で逮捕された。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は26日、デイリースポーツの取材に対し、谷本容疑者が3年前に同市で起こした事件との関連を踏まえ、突発的な犯行ではなく、計画的な犯行である可能性を指摘した。
逮捕容疑は20日午後7時20分ごろ、片山さんの胸などをナイフで複数回刺して殺害した疑い。谷本容疑者は22日に東京・奥多摩町で逮捕され、「殺意を持っていたかは分からないが、ナイフで1回か2回ぐらい刺したことに間違いない」と供述している。
片山さんは20日午後6時半ごろ、市内の勤務先を出た後に郵便局や、スーパーでの買い物を経て帰宅。尾行していた谷本容疑者が片山さんに続いてオートロックのドアが閉まる前に侵入し、エレベーター内で犯行に及んだとみられている。
被害者の勤務先近くで待ち伏せし、約50分間にわたって尾行していた容疑者の行動について、小川氏は「これまでも何度か女性の後をつけており、帰宅する時間帯、職場を出てからどちらの方向に行くかは分かっていた。今回の数日間だけでなく、それ以前から神戸に来て、片山さんを追いかけていた可能性も否定できない」と推測した。
その根拠として、小川氏は「1か月近く前に東京から新神戸行きの新幹線チケットと神戸のホテルの予約を取っています。少なくともその時点で、場所をある程度は特定し、この女性を狙っていた可能性がある。3年前も数か月にわたって別の被害女性を追いかけた事件があった。前回もオートロックのマンションに『共連れ侵入』しており、今回も同様の手口を想定していたとみえる」と指摘した。
捜査関係者によると、谷本容疑者は2022年5月、同市中央区のオートロック式マンションに侵入し、当時23歳の女性の首を絞めて殺害しようとした殺人未遂容疑で兵庫県警に逮捕されていた。侵入は同年1月から約5か月間の間に複数回に及んでいたという。同年9月、神戸地裁で住居侵入、傷害、ストーカー規制法違反で執行猶予付きの有罪判決を受けた。
2つの事件には「神戸市中央区のオートロック式マンションに侵入」「被害者が20代前半の女性」いう共通点があった。
小川氏は「同一手口の再犯ともいえます。今回の防犯カメラの映像を見ると、この容疑者は非常に慣れており、3年前に起こした事件の次が今回ではなく、その間にも同じようなことをしていたのではないかとも推測できる。3年前の犯行では数か月にわたって被害女性をつきまとっていたので、非常に(相手への)依存が強いのだろうとみえました」と解説した。
さらに、小川氏は「エレベーターの中で凶器を示して部屋の中に連れ込もうとしたが、女性に拒まれたために刃物で刺した…というように、前回は首を絞めたのが今回は凶器を使っており、手口が明らかにエスカレートしている」と分析した。
一方で、同氏は「血の付いた刃物を近くの駐車場に捨てるなど、犯行後の行動までは計画に入っておらず、東京に戻れば大丈夫だろうと考えていたのではないか。防犯カメラがあるのにマスクで顔を隠すこともなく、手袋もしていないのでエレベーター内などに指紋も残っていたと考えられる。そういう意味で稚拙な犯行である一面も垣間見える」と付け加えた。